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Special Topic Article 3. Nuclear Fusion Research by Tri Alpha Energy H. Gota and M.W. Binderbauer
維持できていることがわかる.電子温度径方向分布を見る と,FRC(セパラトリクス)内部から外の開いた磁力線領 域・SOL までの広い範囲にわたって高い温度が保たれて いることもわかった.これは高エネルギーのビームイオン が(開いた磁力線領域も含めて)FRC 内部を大きな半径で 軌道周回しているためだと考えられ,閉じ込め特性の向上 した FRC や SOL 領域のプラズマへの加熱効果が上がって いることも高温の径方向分布を保つ一因となっている.
C-2/C-2U 実験における FRC プラズマの閉じ込め特性を 検討する際,プラズマ全体における熱エネルギー変化量を 0次元モデル(0‐D Power Balance Analysis)を用いて議論 することができる[15,16].このとき電子とイオンを別々 に取り扱い,それぞれのチャンネルへの入力量(Input/ Heating)と出力量(Output/Loss)のバランスを保つよう に計算し,電子とイオンの熱エネルギー(!&$)閉じ込め特 性を !"!#と !"!%として検討・見積もる.ここで図4に,C-2 実験・解析から得られた電子エネルギーの閉じ込め時間 !"!#と電子温度 "#の関係性を示すと,電子温度の上昇とと もに閉じ込め特性が向上しているのが見てとれる[10].ま た最近の C-2U 実験・解析の結果からもその関係性が保た れていることが確認できた.これは我々 TAE での FRC 実験・研究を進める上で非常に重要な結果であり,このス ケーリング則を基に今後の実験装置の開発や将来的な FRC 型核融合炉のデザイン設計に役立てることができる と考えている.
3.3 今後の課題・展望
TAE による NBI を用いた C-2/C-2U 実験で,これまでの 他 FRC 実験研究では成し得なかった FRC プラズマ性能を 達成出来たことの意義は非常に大きい.FRC プラズマの閉 じ込め特性の向上や配位持続時間・寿命の伸長など,飛躍 的にプラズマ性能を向上させることに成功した結果,これ までの FRC 研究で効果的に実験的検証・議論ができてい なかった物理機構(例えば,FRC 平衡状態,粒子・エネル ギー輸送等)の解明に取り組むことが可能となった.また, FRC プラズマのさらなる性能向上をめざし,追加熱・粒子 供給・電流駆動等についても実験的検証が始まっている. 本実験研究で得られた,FRC プラズマの閉じ込め特性(電 子エネルギー閉じ込め時間)が電子温度の約 1.8 乗と比例 関係にあるという結果(図4)は,核融合研究において議 論されるローソン条件(密度・閉じ込め時間・温度の三重 積)の観点から見てもとても魅力的である.この新しい "#スケーリング則に沿って,今後はどのようにプラズマ性 能をより向上させられるかが大きな鍵となる.
C-2/C-2U 実験では準定常磁場コイルを除き,プラズマガ ンや NBI 装置も含めて主となるシステムは全てパルス放電 となっている.そのため,C-2U 実験で得られた FRC プラ ズマ性能(高閉じ込め,平衡配位持続時間~5+ミリ秒,寿 命~10+ミリ秒)は,装置の蓄積エネルギーによって制限 されてしまっているのが現状である.したがって,TAE における次の実験装置 C-2W(図5)では,各主要システム の蓄積エネルギーを増やすことによってパルス放電時間を
~30ミリ秒まで延ばす計画でいる.また,さらなる FRC プラズマの性能向上(高閉じ込め・長寿命・高温化)をめ ざし,1 NBI 装置のさらなる高出力化やエネルギー最適 化,2内部ダイバータ設置による開いた磁力線領域のプラ ズマ性能向上,3外部磁場コイルの電流ランプアップ,4 FRC プラズマのフィードバック制御用コイルの設置な ど,数多くの改良点・新規点を兼ね備えた次期装置の設計 となっている.この C-2W 実験は2017年度中に開始される 予定であり,その実験結果・成果報告が大いに期待され る.このような早い周期で実験・装置改良を繰り返し行え るのは TAE そして企業研究の強みであり,これからも核 融合研究の発展・進展に貢献していきたい.
参考文献
[1]Details in TAE website at http://www.trialphaenergy. com/
[2]M. Tuszewski, Nucl. Fusion 28, 2033 (1988).
[3]L.C. Steinhauer, Phys. Plasmas 18, 070501 (2011). [4]神前康次 他:プラズマ・核融合学会誌 71, 469 (1995). [5]浅井朋彦 他:プラズマ・核融合学会誌 84, 498 (2008). [6]H. Momota et al., Fusion Technol. 21, 2307 (1992). [7]M.W. Binderbauer et al., Phys. Rev. Lett. 105, 045003
(2010).
[8]M. Tuszewski et al., Phys. Rev. Lett. 108, 255008 (2012). [9]H.Y. Guo et al., Nature Communications 6, 6897 (2015). [10]M.W. Binderbauer et al., Phys. Plasmas 22, 056110 (2015). [1]H. Gota et al., Fusion Sci. Technol. 68, 44 (2015). [12]M.W. Binderbauer et al., AIP Conference Proceedings
1721, 030003 (2016).
[13]A.L. Hoffman and J.T. Slough, Nucl. Fusion 33, 27 (1993). [14]L. Schmitz et al., Nature Communications 7, 13860 (2016). [15]D.J. Rej and M. Tuszewski, Phys. Fluids 27, 1514 (1984). [16]E. Trask et al., Bull. Am. Phys. Soc., UP8.00018 (2014).
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図4
C-2 実験(HPF12/HPF14)により得られた電子エネルギー 閉じ込め時間と電子温度の相関(スケーリング則).
図5 TAE における次期実験装置,C-2W 概略図.


































































































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