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回転方向(イオンの反磁性方向)と逆になるため #!"モー ド回転不安定性の発生を抑制できる.また,プラズマガン 表面への開いた磁力線の短絡・凍り付きにより,FRC が径 方向へシフトする巨視的#!!モード不安定性の低減にも 繋がった.これら2つの巨視的不安定性をプラズマガンに よって安定化できたことから,C-2/C-2U 装置において FRC プラズマへのビーム入射効果をより一層高めること に成功し,ビームイオンのプラズマ安定化効果(有限 Lar- mor 半径効果)との相乗効果により更なる FRC の安定化・ 長寿命化に繋がった.
4 NB Injection:上述した技術1~3が全て,FRC プラ ズマへの効果的な NBI を実施・実現するための技術だとご 理解いただけたであろうか.既に記述した通り,ビームイ オンにより FRC プラズマを保持することが本 C-2/C-2U 実験での目的であり,その実現に向けて TAE では実験 的・理論的に研究を進めてきた.C-2 装置では,ビームエネ ルギー(!#&%')20 keV・最大ビーム総出力("#&%')~4 MW 程度の NB を FRC プラズマ電流と同方向かつ接線方向へ
(装置軸に対して)垂直(90°)に入射した.この C-2 実験や シミュレーションの結果から C-2U 実験で用いる NBI 装置 の最適条件を検討そして導き出し,C-2Uでは!#&%' ~15 keV と "#&%'~10+ MW を持つ NBI 装置を新たに開発 し図1に示すような入射角度(装置軸に対し65°-75°で可 変)を持たせて設置した.このとき,FRC 閉じ込め部の外 部磁場分布の最適化や金属容器の磁場浸み込み時間の制御 も併せて行ったことにより,FRC プラズマの形状やビーム イオンの密度分布の制御を容易にすることが可能となった.
3.2.3 プラズマ閉じ込め特性の向上と配位維持
C-2/C-2U 実験において FRC プラズマの閉じ込め特性の 向上は,前項でまとめた主要技術の運転最適化や相乗効果 により成し遂げられた.なかでも,プラズマガンと NBI によって FRC プラズマの安定化さらには配位維持への効 果は顕著に現れ,外部磁場分布(図1,Confinement/For- mation/Mirror-plug sections)の制御と併せることにより 開いた磁力線領域(Scrape-off layer (SOL)/Jet region)のプ ラズマ特性向上にも繋がった.図2に C-2 実験で得られた FRC プラズマの粒子閉じ込め特性(!$)を,これまでの他 FRC 実験装置から得られたスケーリング則[13]と比較し ながら示す.この C-2 実験結果は様々な実験条件のもとで 得られたものだが,プラズマガンや NB を用いた不安定性 抑制を行っていない実験初期の場合(図中,No Gun/NB), 比較的スケーリング則に近い結果となっている.しかし, その後のプラズマガンと NB を用いた実験結果はこれまで のスケーリング則から大幅に外れ,FRC プラズマの閉じ込 め特性が著しく向上しているのが見てとれる.C-2 実験に おいて最もプラズマ性能の良かった HPF14プラズマでは,粒 子閉じ込め時間が2ミリ秒を超えるショットも観測された.
このような閉じ込め性能の良い HPF プラズマをドップ ラー後方散乱(DBS)反射率計によって揺動観測を行う と,FRC(セパラトリクス)外の開いた磁力線領域では揺 らぎが観られるが,反対に FRC 内部では比較的静かで安定 し た 状 態 で あ る こ と が わ か っ た[14]. プ ラ ズ マ ガ ン や
NBI によるプラズマ制御を行わない場合に比べると,HPF 状態では飛躍的に揺動が抑えられている.揺らぎの大きさ は粒子・エネルギーの輸送機構と密接な関係にあるため, この揺動観測の結果からも FRC プラズマの閉じ込め特性 の向上が裏付けられる.
ここで図3にプラズマ性能向上の例として,C-2 実験で 得られた2放電条件(No Gun/NB,HPF14プラズマ),さ らには C-2U 実験から観測された NBI 出力の異なる2条件
("#&%'~5 MW,10 MW)での規格化プラズマ半径と電子 温度(C-2/C-2U で1条件ずつ比較)の時間変化を示す.前 項にて解説した HPF プラズマ生成のための主要技術や 図2・図3からもわかる通り,C-2/C-2U 実験においてプラ ズマガンと NBI が FRC のプラズマ性能へ与える影響・効 果はとても顕著に現れている.図3の FRC プラズマ半径・ 配位持続時間を見て比べても,C-2 から C-2U へ装置改良後 に"#&%'~5MWとNBI出力を抑えたショットでも C-2 HPF14 のプラズマ性能を上回っている.これは先に記 した NBI 装置の改良や運転最適化による効果であり,さら には C-2U にて NBI 出力を最大("#&%'~10 MW)に上げた ショットではプラズマ半径のフラットトップ・平衡配位持 続時間が 5 ミリ秒を超え,且つプラズマの寿命は 10 ミリ秒 を超えるまで伸長された.また,電子温度の時間変化から も FRC プラズマ性能の向上が確認でき,C-2U では平均 ~120 eV 程度の状態が比較的長い時間(5 ミリ秒程度まで)
図2 C-2 実験で得られた FRC の粒子閉じ込め時間 !N とその他 FRC 装置によって得られたスケーリング則[13]との比 較.C-2 データ(●)は,各条件での10ショット以上の平均値.
図3 C-2/C-2U 実験により得られたプラズマパラメータの時間変 化:(上)規格化されたプラズマ半径,(下)装置中央で計測 されたトムソン散乱による電子温度.
Journal of Plasma and Fusion Research Vol.93, No.1 January 2017
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