Page 9 - Demo
P. 9

Special Topic Article 3. Nuclear Fusion Research by Tri Alpha Energy H. Gota and M.W. Binderbauer
ようなFRCプラズマ特性の向上した状態をHigh- Performance FRC(HPF)と 呼 び[10],そ し て 最 大 10 MW を超える高出力 NBI による高速イオンでその HPF プラズ マ状態を保持できるようになったことから Advanced Beam-Driven FRC とも呼んでいる[12].
本章では,これら C-2/C-2U 装置による実験結果を得ら れるまでの過程や肝要な技術等をレビューする形で,主要 な研究成果とともに次節で紹介する.
3.2 C-2/C-2U 実験概要・研究成果
TAE における FRC に特化した研究背景や意義について 前節で簡単に記したが,(前身である A,B,C‐1装置によ る研究概要は省略し)C-2 実験が本格的に始まったのは
208年からである.実験開始当初は FRC プラズマの生成法 や運転最適化に力を入れ,ある程度 FRC の配位持続時間が 延びたところで,電磁流体力学(MHD)的不安定性の抑制 や NBI によるプラズマ加熱・配位維持をめざした実験へと 移っていった.この C-2 実験で FRC プラズマ特性の向上が 確認され,高出力 NBI システムによりさらなる向上や配位 維持が見込める目処が立ったため,最大出力 10 MW を超 える NBI システムを新設し2015年から C-2U 実験が始まっ た.その最新,大型 FRC 実験装置 C-2U の概略図と FRC を含む磁力線図を図1に示す.また,C-2/C-2U 実験におい て HPF プラズマを生成するために鍵となる主要技術は大 きく分けて4事項(1 FRC Dynamic Formation,2 Wall Conditioning,3 Edge/Boundary Control,4 NB Injection) あり,それら技術の概要や主要結果について実験装置概要 とともに次に記す.
3.2.1 C-2/C-2U 実験装置
大型 FRC 実験装置 C-2U(図1)が C-2 装置から主に改良
された点として,1 NBI 装置の高出力・入射角度・ビーム エネルギーの最適化,2不安定性制御用プラズマガンなら びにダイバータ内電極の最適化,3プラズマ磁場分布の最 適化などが挙げられる.
C-2/C-2U 装置での共通事項を以下に記す.全長約 20 m の装置の中央に FRC 閉じ込め部(金属容器),その両側に FRC 生成部(石英管)とダイバータ(金属容器)がそれぞ れ対称に設置されている.FRC プラズマの配位持続時間に 比べて十分に時間スケールが長い準定常コイル(図1,DC
図1 上:C-2U 実験装置図,下:C-2U 装置断面の FRC プラズマ と密度分布・磁力線図.
Magnets)は装置全域にわたり配置されており,FRC 閉じ込め 部での軸方向磁場(!')は平均で 0.1 T 程度,そして FRC の閉じ込めに必要な磁場のミラー比は 3-3.5 程度である. また,両端のダイバータ領域には 2 T 程度の強磁場ミラー プラグが設置されており,開いた磁力線プラズマの閉じ込 めやプラズマガンを運転する際に重要な役割を果たしている.
3.2.2 高性能 FRC(HPF)生成への主要技術
C-2/C-2U 実験において HPF プラズマを生成するための 主要技術4項目についてそれぞれ説明していきたい.
1 FRC Dynamic Formation:FRC プラズマ生成時に重要 な点として,NBI が有効に効くターゲットプラズマの生成 が挙げられる.そのために我々が用いている手法は,2つ の生成領域(Field-Reversed Theta Pinch 法を採用)で作っ た FRC プラズマを装置中央閉じ込め部に 250 km/s 程度の速 度でそれぞれ移送し,衝突・合体させることによりNBI に適し たターゲットプラズマの生成に成功した.その衝突・合体直 後の FRC プラズマパラメータとして,プラズマ半径 &!"~0.35 m,長さ $&~2-3 m,捕 捉 磁 束 "$~5-7 mWb, 電子温度 #"~100-150 eV,イオン温度 ##~500-800 eV, 電子密度 %"~2-3×1019 m-3 である.この衝突・合体直後 の FRC プラズマに不安定性制御用プラズマガンの運転や NBI を実施しない場合,FRC の配位持続時間・寿命はトロ イダルモード%#!回転不安定性の発生・成長によって決 まり,ほとんどの FRC は 1 ミリ秒という短い時間で崩壊し てしまう.
2 Wall Conditioning:FRC プラズマへの NBI 効果・効率 を上げるため,金属でできた閉じ込め容器(図1,Confine- ment Chamber)内壁の適切な処理が必要となる.FRC へ 入射されたビームがセパラトリクス外部の中性粒子・ガス により荷電交換損失が生じるため,その損失量の低減なお かつ真空度の向上や不純物の低減のために真空容器内壁に チタンコーティングを定期的に行っている.また金属容器 であるダイバータ内壁にも同様にコーティングを行うこと により,装置全体の更なる真空度の向上や不純物の低下に 繋がった.これらコーティング技術により,FRC 外部の中 性粒子密度が大幅に低減され,NBI 高効率化により FRC プラズマ性能を上げることに成功した.
3 Edge/Boundary Control:これまでの FRC 実験的研究 において最も懸念されてきた MHD 的不安定性は,既述の n=2モード回転不安定性である.この FRC 配位崩壊に繋 がる不安定性抑制のため,C-2 装置においても初めは4重 極アンテナを閉じ込め領域に設置してプラズマの安定化を 図ってきた.ただ,この多重極磁場印加により FRC プラズ マの安定化はある程度成されたのだが,逆に回転方向の磁 場不一様性によって NBI の効果が大幅に低減されてしまっ た.そのため,新たに導入されたのが同軸プラズマガンを 用いたプラズマ安定化へ向けた取り組みであり,ダイバー タ内の装置軸に設置(図1,Plasma Gun)することにより 開いた磁力線を通して FRC プラズマの安定化を図った.こ れはプラズマガンにより発生する内向きの径方向電場
(!"%)と軸方向磁場(!')の掛け合わせ(""!)により生成 される FRC 外部のシアフローの向きが,FRC プラズマの
25


































































































   7   8   9   10   11