Page 8 - Demo
P. 8

小特集 企業による核融合研究の最近の動向 3.トライアルファエナジー社による核融合研究
3. Nuclear Fusion Research by Tri Alpha Energy
郷 田 博 司1), BINDERBAUER Michl W. GOTA Hiroshi1)and BINDERBAUER Michl W. (原稿受付:2016年10月27日)
トライアルファエナジー(TAE)では,2つの磁場反転配位(FRC)プラズマの衝突・合体と中性粒子ビー ム入射(NBI)によって高温プラズマを得る手法で,平均ベータ値が1に近い磁場閉じ込め核融合方式をめざし た実験・研究を行っている.最終的には先進燃料 p-11B を用いた中性子排出のない核融合炉の開発・運転を目標 としている.最近 C-2/C-2U 実験で得られた,総出力~10 MW の NBI システムによって形成・保持される FRC プラズマの性能は,平衡配位持続時間が~5+ミリ秒(寿命~10+ミリ秒)に伸長し,粒子・エネルギー閉じ込め特 性が飛躍的に向上するなど革新的成果がいくつも挙げられ,今後の更なる向上も期待できる.
Keywords:
field-reversed configuration, FRC, compact toroid, neutral beam injection, plasma sustainment, aneutronic fusion, advanced fuel
J. Plasma Fusion Res. Vol.93, No.1 (2017)24‐27
3.1 TAEの企業・研究背景
アメリカ・南カリフォルニアに拠点を置くトライアル ファエナジー(TriAlphaEnergy,以下TAE)は,商用核 融合炉の開発・定常運転をめざす民間企業として198年に 設立され,現在は世界最大規模の私的資金の投入実績と実 験装置を有する企業として活動している[1].この会社設 立には,カリフォルニア大学アーヴァイン校(UCI)の故 Norman Rostoker 教授,フロリダ大学(UF)の Henk Monk- horst 教授,そして本稿の共著者である Michl Binderbauer 博士等が携わり,今でも会社設立時の企業概念や産学提携 の体制を維持している.TAE のめざす磁場閉じ込め核融 合 炉 は,磁 場 反 転 配 位(FRC: Field-Reversed Configura- tion)[2,3]を炉心プラズマとし中性粒子ビーム入射(NBI) によって電子加熱さらには電流駆動により配位を保持し, 水素(p)とホウ素(11B)の核融合反応により発生する 8.7 MeV のエネルギーを抽出することである.また,その p-11B 核融合反応により3つのアルファ粒子(4He)も発生す ることに由来して Tri Alpha Energy と社名が付けられた.
核融合炉開発・定常運転に向け他機関・装置にて主に使 用が検討されている D-T 燃料ではなく,TAE では先進燃料 である p-11B(または D-3He も可)を採用するのは核融合主 反応によって人体にも悪影響を及ぼす中性子が発生しない 安全で究極の核融合炉をめざすからである.これは技術的 な面でも利点が多く,中性子発生の懸念が要らない(少な い)ために炉設計・開発・運転を容易にしてくれる.ただ, 核融合反応・燃焼させるための条件は D-T や D-D 反応のそ れよりも難しく,その条件をどう達成させ尚且つ定常運転 を実現させるかは今後の課題である.
FRC という磁場閉じ込め概念や特性,それを核融合炉心
Tri Alpha Energy, Inc., CA 92688, USA
プラズマとして採用する魅力・利点などについては,これ まで本学会誌での特集記事[4,5]や他学術誌のレビュー記 事[ 2 ,3 ]で 紹 介 さ れ た り , 炉 心 概 念 設 計 " A R T E M I S [" 6 ]と して発表されたりもしている.FRC は自己トロイダル電流 により形成されるポロイダル磁場のみで配位が成り立ち, そのプラズマ圧と外部の磁気圧比で示されるベータ値は
10%に近い平衡状態を持ち合わせていることから,コン パクトで高効率の核融合炉心プラズマとしての魅力に長け ている.また,その閉じた磁力線構造は FRC(セパラトリ クス)外部の開いた磁力線とは独立に存在するため,容易 に軸方向への FRC 移送が可能となり,また装置両端のダイ バータを用いて直接エネルギー変換も実現可能であると考 えられるなど,多くの特長や核融合炉心プラズマとしての 魅力がある.TAE ではこれら多くの魅力を本質的に兼ね 備えたFRCプラズマを用いて,NBIにより生成される大き な Larmor 半径・周回軌道を持つ高速イオンでプラズマを 保持さらには加熱し,そして最終的には先進燃料を用いて 核融合反応・燃焼まで達成しようというのが狙いである.
FRC は磁場閉じ込め概念の世界的主流であるトカマク 型やヘリカル型と比べると研究規模は小さいものの,日米 両国では TAE も含めて今でも FRC の実験的・理論的研究 が盛んに行われており,核融合炉心プラズマへの応用をめ ざして日々進展しているのが現状である.近年では,TAE での C-2/C-2U 装置による実験結果により,これまで FRC 研究で懸念・議論されてきたプラズマ不安定性の抑制や粒 子・エネルギー閉じ込め特性の改善など飛躍的進歩を顕著 に表し[7‐1],さらには NBI の出力を上げることにより FRC プラズマの平衡配位持続時間は 5 ミリ秒(プラズマ寿 命は 10 ミリ秒)を超えるまで伸長された[12].我々はこの
corresponding author’ s e-mail: hgota@trialphaenergy.com
!2017 The Japan Society of Plasma Science and Nuclear Fusion Research
24


































































































   6   7   8   9   10