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Special Topic Article 2. Entrepreneurial Spirits and Fusion Research in North America T. Tajima
い.最近,日本のテレビを見ていると「金融工学者の挫折 と挑戦」と言ったようなテーマでの番組(皆様も見られた かもしれない)があり興味深く拝見した.リーマン・ ショックの反省から主人公のジョン・ソー博士は,マネー ゲームで金儲けをしようとするマネー資本主義から脱皮し social impact(社会貢献事業)に金融工学で資金を回し社 会の活性化を図ることで利潤を挙げるという戦略を紹介し ていた.マネー資本主義と対局的な social impact は,慈善 事業とは違い利潤を追求しながら,いっぽうでは社会的貢 献を目的とする点については慈善事業と共通する点を持つ ので,その二極の間に位置する戦略と考えられる.我々は, 投資者に当研究が単なる金儲けの道ではなく,人類存亡を 問う気候変動への答えを早期に出す手段として提案し,気 候変動研究者・投資家など社会への積極貢献を重視する活 動なども展開する.これは,社会からの自発的支援こそが 我々の起業の支えの原動力の一つであると信じるからだ. こうした点について読者の皆様とも対話をしていきたい. 4 fail fast と正反対に見えるようだが,我々は low lying fruits(「易しく手に入る果実」)をもめざす.これには, 我々が開発した技術が核融合炉より前に利用できるような 医療技術などが例に当たる.この考え方は,3 の社会貢 献重視の考え方と軌を一にする.「果実」が早く社会的に 実現されることは,我々の技術力への信頼を増し,「果実」 取りが寄り道になるのでなく逆に核融合炉への道がより現 実化しそれを支援・加速する力にも転化できるであろう. この考え方は,従来の核融合研究にあまり適用されてこら
れなかったのではないか.
 各企業は自らのレゾンデートルと創意で立業しているの
でその哲学が皆同じとは思っていない.色々な創意あるト ライが試され fail fast で篩に掛けられ,その中からある活動 が浮かび上がってくるのかもしれない.ただ我々は,そう した活動の精神の芯として,企業哲学は我々に取って個別 の企業技術よりも重要だと思っている.最後に,繰り返し になるが,我々は,上記の研究活動とそれを支える企業活 動を通じて,現在の人類が抱える環境問題,エネルギー問 題,気候変動,「南北」問題,などの社会的課題へのささや かではあるが真剣な貢献とコミュニケーションの惹起へ向 けて,路傍の石になる覚悟である.皆様方からのご連絡, コメントやご協力を得ながら,こうした社会活動に尽力し たい所存である.是非,積極的な意見交換,研究交流,社 会交流などをお願いしたい.先達や同僚からいただいた啓 示,教授,共同作業に深く感謝するとともに,これらかも 受けるかもしれない激励,協同,社会的・研究上の連携に も予め謝意を捧げたい.
参考文献
[1]T. Tajima, and M. Binderbauer, eds. Physics of Plasma- Driven Accelerator and Accelerator-Driven Fusion: Pro- ceedings of Norman Rostoker Memorial Symposium (AIP, NY, 2016). http://scitation.aip.org/content/aip/ proceeding/aipcp/1721
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